4月8日 【次回対話の会開催予定】

【テーマ】

 

中村和恵「ヨウカイだもの」を読む会

     

【参考テキスト】『ろうそくの炎がささやく言葉』(管啓次郎‣野崎歓編,勁草書房)

      ※当日、資料として配布させていただきます。

 

【開催日】2018年4月8日(日)13:00~16:00

 

【会 場】福島市中央学習センター
福島市松木町1番7号

電話番号:024-534-6631

 

【参加費】 200円 

 

【参加自由】 どなたでも参加できます。

 

【ファシリテーター】たけさん

 

【共 催】郡山対話の会&カフェロゴ

 

【開催趣旨】

 

 去る1月27日に中村和恵さんの詩「ワタナベさん」を読みながら、その詩を通じて様々な思いを語り合う会を開催しました。

 

 約5時間にわたる長時間の対話の時間に参加して下さった方々は、最大で17名。

 年齢層は、震災当時高校生だった方から、お孫さんを持つおじいちゃんまで、

 エリアは福島市から二本松市、いわき市、郡山市からはもちろん、遠くは熊本から東京からお越しいただきました。

 

 「ワタナベさん」という詩は、ブラックな企業・社会で生きる「ワタナベさん」にあてて書かれた手紙です。

 しかたがないとあきらめ「抵抗しない」ワタナベさんに、「ソレデホントウニイイノ?」と書かれた手紙。

 それを読み、参加者の皆さんからは「まるで自分に送られてきた手紙のようだ」という感想が出されました。

 

 対話の記録は、まとめおわり次第HPにアップさせていただきますが、今回の議論で一番印象に残ったのは「今さら」という言葉が何度も出てきたことです。

 

 例えば、放射能のことを話題にしたりすると、「7年も経ってまだ言ってんの」「7年も過ぎて今更なんなの」って空気になる

 

 こうした話がつい最近も身近で話題になったことを話してくれた方がいました。

 

 「あきらめ」という言葉といっていいのかわかりませんが、みんなが前向きになっているのに、何を今さら過去をほじくり返すのか。

 

 7年が経ち、ますます語りにくくなっている福島のなかでは、こうした気分が同調圧力となってますます語りにくくしているという話は何人かの人から挙げられた感想です。

 

 今回は、「ワタナベさん」の作者であり、旧英領植民地を中心とする非西洋圏の文化・文学の比較研究を専門とする中村和恵さんも来て下さり、「いまさら」に「抵抗する」ことについて興味深い対話が行われました。

 

 中村さんは、言うべきことをハッキリ言って「空気読めない奴」と思われたら「ゴメンネ ワタシ ヨウカイ だもの」ということにしているんだよーと教えてくれました。

 

 ブラック〇〇という言葉がありますが、私たちの職場や、地域社会や、国家にブラック的なものが登場した時、「イマサラ」とあきらめず、ヨウカイ化し、自分の今いる場所に、抵抗の旗を掲げてみる

 

 そんな深い気づきに至る、豊かな対話の時間となりました。

 

 次回の対話の会は、福島市で開催を予定しています。

 

 再びカフェロゴさんと共催し、中村さんの書かれた「ヨウカイだもの」という詩を通して、「空気」や「しかたがないこと」や「抵抗」など、〈語れること〉から〈語れないこと〉までを語る会の第2弾を開催したいと思います。

 

 

 詩の一部を紹介します。

 

 

 ヨウカイだもの 中村和恵

 

 

 イワユル文明社会の イワユル有能な人間に

 

 おまえはグズの文句言い 人生のムダづかいといわれた

 

 隣のおやじものたまう そんなこといっているとあんた、埋められちゃうよ

 

 お酢につけるぞっていったひともいたけど ミツカンスでいいのかな

 

 おまえはおれたちをだましているんだと考えの浅い年寄りが叫んだ日

 

 手帳に書いた

 

 今朝気がついたけれど、あたしはきっと

 

 人間ではなくて ヨウカイなんだ

 

 理解されないのはしかたがない

 

 ヨウカイだもの

 

〔中略〕

 

 あたしはヨウカイだから

 

 みんなの気持ちはわからない

 

 ニンゲンに聞いてよ

 

 みなさんに聞いてくれ

 

 わるくないな ねえ

 

 ヨウカイになってからというもの

 

 なかなか調子がいい

 

 なんでみんなもっと

 

 ヨウカイにならないんだろうね

 

〔以下略〕

 

 「ワタナベさん」 中村和恵
 
 …ワタナベさん!じわじわ殺されても黙っているんです
か。 あんたの人生じゃないですか。
 

 だれのために黙っているんですか。家族だってたまには本音聞きたいんですよ、ワタナベさん!
 

 怒ってくださいよ。おれの責任じゃないって、下請けには悪かったって、社長はどこにいったんだって、上司がこうしろっていったんだって、正直な話聞かせて下さいよ。 ワタナベさん、ワタナベさん。でもワタナベさんはなにもいわない。

 

 ワタナベさんは限界まで耐えている。勇気がないから。
 

 ワタナベ君、会社のためなんだよ。わかってくれるね。

 

 お嬢さんはもう卒業したの。二人目は男の子だったね。 お母さんも大変なんだろ。奥さんはよくできた人だな。 ワタナベ君、会社のためなんだ。君も生活あるだろう。社員みんなの問題なんだよ。君ひとり勝手な正義感をふりまわして責任とれるのかい。 それは上が判断することだよ。
 

 ワタナベさん、それは他人じゃなくて、あんたが判断することだ。生き物として、一匹分の場所をと後ろに跳びながら叫べよ。でもワタナベさんは叫ばない。

 

 …生きて死ぬのはあんたなんだよ。でもワタナベさんはうつむいて遠い目をして眼鏡を拭くだけなんだ 。いまさらなぁ。

 

 …だけどわかんないよワタナベさん。やめる気になりゃやめられることをあんたはやめようっていわない 、それがわかんないよワタナベさん。

 

 …おまえのしょうがないはしょうがないのかほんとにワタナベ。 ワタナベよ!ほんとうにワタナベ。ワタナベよ!ワタナベさん!」
 

(詩の引用終わり)